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M氏のこと。
氏は故人になった。 画家だった。
それも日本で有数の油彩画家だった。

祝島を描いた画家と言えば、ご存知の方は
すぐに名前をあげることができるだろう。
さて、そのM氏とわたしは面識があった。
わたしは、当時絵を描きながら画材店の店員をしていた。

わたしはいつか思うようになっていた。
このM氏から、ウソ偽りなく、
お世辞抜きで自分の作品を評価してほしいと、
大それた事を考えていた。

作品展で優秀な成績を収めるより、
自分の中ではそれが一番の評価だと思っていたからだ。
そう思うと、自分は自然とそのための準備をするらしい。
(自分でも気が付かないうちに)

わたしは、M氏の画を尊敬するものの、
そのために影響を受けたくなかった。
ともすれば氏の画風は個性的で魅力的だったから
知らないうちに、似たものを描いてしまう。

だから、なるべく素っ気無い態度を取るようにしていた。
敢えて嫌われようとしていたのだ。
そのため、M氏もこちらに嫌悪感を抱いていたようだった。

県美術展が開催されたある年の秋のこと。
自分の作品のひとつが佳作賞に選ばれた。
嬉しかったが、少し古い作品を大きなサイズにしてリメイクしたものだったので、
原作と比べて、イマイチ納得できていなかったのだが。

それをM氏が見たという。

K氏というM氏を崇拝する画廊の人だが、
そのK氏がこう言った。
「ええか、よう聞けよ。二回言わんから」

なんでコイツにこんなことを言わなきゃならんのだ、
とでもいうように苦い顔をして言葉を続けた。

「M氏と一緒に美術展に行った。
どの作品にも足を止めん人が、急にある作品の前で足を止めた。
こりゃ~、誰の作品か?と聞くんで
誰の作品かと思ったら、あんたのだった。

で、作者の名前を伝えた。そしたらM氏が、クレーに似ているが、
オレが、ええ作品だと言っていたと伝えておけ、って頼まれたんだ。
たまげたよ、フツウあんなことは言わん人だから」

言葉を聞いて、瞬間、ゾクっとした。
念願が叶ったと思った。
ほんとうになってしまった驚き。

知っている人の描いた物を見ると、
どうしても感想が甘くなってしまう。
まして、懇意としているならば当然かもしれない。

では、逆であれば?
嫌な人の描いたものを見て、
素直に評価できるだろうか?
フツウは評価しない。

わたしは、不本意ながら懇意にはしていなかった。
だから、嘘偽りにない評価をしてもらったと思い感動したのだ。
もし、親しくしておれば、オレを知っているから、
そう言ったんだと思っただろう。

そこには素直に喜べない気持ちがある。
M氏は個人的な感情抜きで、作品を評価してくれた。
立派な態度だと思ったし、なかなかできるものではない。

もう絵を描かなくなって随分となるが、
忘れられない思い出となっている。
M氏は90を過ぎて亡くなられた。


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この記事は2006年6月28日に書いたものです。
なので冒頭に載せる「写真」がなく。なんと!「、」を使っております。
当時から「、」についてどう扱えばいいのか?迷っていたました。

「1春1000冬」の初めは2009年5月としていますが。
実際は2006年6月に始めています。ただ書く目的が定まっておらず。
あやふやな気持ちの中で10回ぐらい書いた後に放り投げてしまいます。
(つまり3年間のブランクがあるのです)

改めて始めたのは自分の人生を振り返って。
峠の上から見下ろすように描いてみようと思い立ったからです。
これがブログを書く理由付けになり基本的な構成になりました。

と同時に様々なカテゴリーを設けることにより。
書く内容の幅を広げたり書き方の実験をしたりと。
我ながら楽しんで書けるようになりました。

今回と次回(2010年)の記事を掲載することにより。
当時の考え方・文章の変化を振り返ってみました。
え?たいして変わってない?@@;ま。それはそれで良し^^;



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これは嬉しいですね。
そしてその前に、ちゃんとした、なれ合いで無い評価が欲しいと望んだwaravinoさんの気持ちが素晴らしいと思いました。どうしても知人の評価にはブレが出てしまいますもんね。
そう言うものを抜きに勝ち取った評価。これは本当に正当だし嬉しいものだと思います。

話しはちょっと飛びますが、小説の新人賞や、芥川賞候補に、イケメン俳優や、若い(小説未経験の)歌手が選ばれたことがあります。
作品はとても拙いものでした。でも、出せば売れるでしょう。力のある一般人が書くよりも。出版社は、売れてナンボです。

だけどこういうのは、本気で創作している一般人の気持ちを殺してしまうし、なにより本人たちのプライドを疑ってしまいます。
事例はちょっと違うかもしれませんが、本質は同じ。
こういう有名人より、waravinoさんの方が断然カッコいいと思えますね、ほんとうに。
limeさん^^
コメントありがとうございます。

もう12年前に書いたものなんですよねぇ。
この件があったのがずっと昔。
そして今は絵画創作をしていないという・・・。

小説の世界でも「芸能人枠・有名人枠」があるんですね。
出版界は儲けてナンボの世界。食えるなら何でもアリ。
才能ある人のやる気が萎えてしまうのは残念ですが現実は(;^ω^)・・・
(ずいぶん前に工藤静香の版画展を見ましたが記憶に残っていませんw)

元々。自分は「画家」「絵描き」ではないと思っていたし。
というか。むしろ「描かないで済む」人間になりたかったので。
記事の内容は「自分なりに成すべきことを成した」結果です。

本文で書いたことは事実です。ボクは天邪鬼人間なんです。
M氏は「エコール・ド・パリ全盛時代」を知る最後の画家です。
(ピカソ・フジタ・ゴッホ・モジリアーニ・クリムトetc)
つまり桁外れの全然levelの違う画家なんです。
(その人にケンカを売ったわけですね^^;)

だからこそ氏の評価がホントに嬉しかったのです。
どんな「賞」を戴くよりもこれ以上の「賞」はありませんから。
それを「目的」としていた自分にも呆れますが。
今でも氏の「伝言」には感謝していますし。誇りに思っている次第です。
(だからと言って得意になって。人の絵を上から目線で見ることはありません。
あくまでも5/5の関係で見たいのです。)

こんなオカシナ事を考える人間もいるんです。お金にもならないのにねw^^)/
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