Welcoming cat・1-1
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人通りの少ない路地に入ると。
小さなラーメン屋がある。
黄色いノレンには「ひまわりラーメン」
と書いてある。

玄関の左右にガラスケースがあり。
それぞれ招き猫が置いてある。
右には右手を上げた白猫(人を招く)
左には左手を上げた黒猫(金を招く)

店の主人の友人が開店初日に贈ってくれたもので。
商売繁盛の願いが込められていた。
主人は腕に相当な自信はあったが客は少ない。

「鬼介さん。あんたに愛想がないからだよ。
笑顔。笑顔だよ」
招き猫をくれた友人は笑いながら忠告した。

「へ!愛想笑いができるもんか!」

主人の鬼介は内心そう思っているが。
客がいないでは商売にならないから客が来る度に。
「いらっしゃいませ!」

自分なりに目いっぱいの笑顔を作ってみる。

ところが元来。鬼介の顔は名前の通り。
鬼瓦のようで笑っても泣いても怒ったような顔になる。
おまけに怒ったような口のきき方だ。

だから客は居心地が悪くなり。
食べるとすぐに店を出てしまう。
同じ客が来た事は一度もない。

「親父がこんな顔だったからなぁ。
 生まれつきじゃ。しょうがない」
鏡を見る度に鬼介はため息をつく。
そして最後に決まって。

「客が来ないのはコイツラの働きが悪いせいだ!」
と二匹の招き猫のせいにする。
招き猫はいつもそれを聞いているから不満でしょうがない。

ノレンが下げられると二匹は小さな声で語り合う。

右猫
「いくら人を招いても。主人の顔を見て逃げるんだもの」

左猫
「困るよね。このままじゃ。ぼくたちの立場がない」

どうしたら。お店を繁盛させることができるかと。
二匹は夜も寝ないで考えた。

ある日。

開店前の店の前にランドセルを。
背負った女の子が現れる。見たところ小学3年生。
「ねぇねぇ。ちょっとちょっと」

そう言って鬼介の腕を掴む。
突然のことに鬼介は。うむ!と唸って。
「なんだ!手を離せ!」

思わず女の子を怒鳴りつける。
その怒声に女の子は泣き出してしまう。

「あ。いや。そんなつもりじゃ・・・。
ごめんごめん。おいおい。困ったなぁ」
鬼介は謝ったが。

女の子は泣くのをやめない。

鬼介はどうしたものかと。
腕を組んで唸るばかり。若い頃から。
女は苦手で通っている。

「女は直ぐに泣くから嫌なんだよなぁ。
おいおい。どうしたら。
泣くのをやめてくれるんだ?」






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