びわ雑炊・補~手塚治虫とバンパイヤ
バンパイア




小学生の頃。ボクはマンガ少年だった。

石森章太郎の「漫画家入門」という本を買い。
ペン・墨汁・定規・ケント紙などを揃え。
「将来は漫画家になりたいな」と漠然と考えていた。

そんなマンガ少年にある日。大事件が起こった。

近所に住む1歳年上のYさんというマンガ少年がいて。
彼が言うのには「あの手塚治虫」が。
近日中に市内のデパートでサイン会をするというのだ。

当時。少年サンデーに掲載されていた人気マンガ。
「バンパイヤ」の取材のための来県で。
日本でも有数の洞窟「秋芳洞」を訪れるのが目的らしく。
そのついでにサイン会をするようだった。

これは行かねばならい!

Yさんとボクは少なからず興奮した。
そしてボクらはノート片手(サインしてもらうため)に。
デパートへ駆け付けた。

「手塚治虫」は4階のフロアにいた。
「岡部冬彦」など他の著名な漫画家と並び。
長テーブルで色紙にサインをしていた。

初めて見る「手塚治虫」は大柄で。
白い開襟シャツにベレー帽を被り。
目鼻立ちが非常に立派な印象だった。
彼の描く「弱々しい漫画家の自分」とは全く違い。
とても威厳があるように思えた。

さてサインだが。結局もらえなかった。
前もって行われた抽選会で。
もらえる人はすでに決まっていたからだ。
(ボクらはそれを知らずガックリした)

そのサイン会であったエピソードをひとつ。

サインの抽選会で「岡部冬彦」に当たった女性が。
子供にねだられたものか。
「すみません。手塚先生のサインが欲しいんです。
代えてもらうことができますか?」と主催者側に尋ねていた。

その願いが叶えられたか知らないが。
手塚・岡部両氏が二人並んで苦笑する姿は。
今でも鮮明に覚えている。

ところで「バンパイヤ」はTVドラマ化されている。
TVのカラー化も進んだ頃。何故か白黒での放映だった。

主人公のトッペイ役は若き日の水谷豊。
(これが彼のTVドラマデビュー作)
そして手塚治虫も出演している。
なにせトッペイは手塚プロダクションにアシスタントとして就職する設定で。
手塚が登場するのも当然と言えば当然なのだ。

このドラマは主人公が狼になるシーンを。
「実写とアニメーションの合成」で表現しており。
当時としては斬新な手法だったと思う。
(今ではCGが当たり前だけれど)

まぁ。ずいぶん昔の話だから。
ドラマ自体はほとんど記憶に残っていないが。
当時。新人だった水谷豊が今でも。
「相棒」などで活躍しているのは感慨深いものがある。



※「バンパイヤ」=「バンパイア」
少年サンデー及びTVでは。
「バンパイヤ」のタイトルだった。



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魚を釣る
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「コアジ釣り」をするために。
近所のKさんと目指したのは山陰・長門市仙崎。
詩人・金子みすゞの生まれ故郷でもある。
(仙崎はかつて捕鯨が行われていた)

クルマで1時間半。釣り場へ到着。

岸壁手前にクルマを止め降りれば。
左側に青海島(おおみじま)の大きな山影が見え。
前方には大小の島々が霞んでいる。

青海島へ向かうクジラを模した遊覧船が。
穏やかな白い波を立て目の前を横切って行く。
カモメの鳴き声がひときわ大きくなる。

午前中の空は灰色の雲が多いものの。
清々しい空気で満ち溢れている。
岸壁から海を覗き込めば透明度の高い青。

黒い背の小さな魚の群れが見える。

岸壁には多数の先客があり。
それぞれ思い思いの場所で釣り竿片手に。
海に向かっている。

「コアジ釣り」は初体験だ。というよりも。
釣りなど何十年振りだろう?

Kさんが「サビキ釣り」の仕掛けをする。
釣り竿に6本の毛針がついた糸を結び更にその下に。
「サビキカゴ」を付け餌となるアミエビを詰める。

この「サビキカゴ」の餌が海中で広がり。
コアジが毛針を餌と間違えて釣れるという仕掛け。

Kさんとともに釣れそうな場所に移動し腰を据える。
Kさんがこうやって釣るんですよ。
と言いながら。岸壁の近くに釣り糸を垂らす。

すると。瞬く間に細い釣り竿が激しく湾曲する。
海中に魚の白い腹が見える。
1匹のピチピチしたコアジが空中に跳ね上がる。

白い腹が陽を浴びて美しく光る。
すぐにコアジは海水の入ったバケツに入れられ。
きょとんとした顔で右往左往する。

「さぁ。やってみて」

Kさんに促され釣り竿を手にする。
手本通りに竿を投げてみる。
・・・・・・・・・・・・・・・・釣れない@@;

釣れる時はすぐに釣れるものなのだ。

だが何度試しても釣れない。
ああ。自分に釣られるアホな魚は。
おらんということか?@@;

そうするうちにククッとした感触。来たか?

タイミングを見計らって竿を上げる。
コアジではない。
フグだ。小さなフグが釣れた。

Kさんは残念そうな顔をして。
針をフグから外しポイと海へ投げる。
「そのうち釣れますよ」

慰めの言葉をもらい再度釣り竿を海へ向ける。

だが・・・・・・・釣れない。
「おかしいなぁ。絶対釣れるはずなんだけど」
Kさんは少々焦った顔をする。

「仕掛け」を代えてみようと言い。
以前よく使ったというタイプを付け替える。
Kさんが海中に糸を垂らす。

するとまたたく間にコアジが釣れる。

コアジは我が儘だ。Kさんにはすぐに釣られて。
自分には釣られない。なんだか情けない気分になってくる。
半分諦めながら釣り竿を垂れる。
(ホントはフグを釣っただけでも満足しているんだがw)

「撒き餌をしてみよう」

Kさんはそう言って。垂れた釣り糸の周辺に餌をまく。
餌は散らばりゆっくり沈んでゆく。
それを眺めているうちに竿が海中に引っ張られる。

白い腹が左右に暴れるのが見える。コアジだ。コアジが釣れた。

Kさんはほっとしたような顔をして。
「よかった~。せっかく連れて来たのに釣れないとどうしようかと思った」
と笑いながら胸の内を明かし。
釣りあげられたコアジの口から針を外す。

不思議なものだ。撒き餌をすると次から次へと釣れる。

魚がヒットした時の小気味よい感触。
わずかの時間に十数匹のコアジが釣れた。
バケツがコアジでいっぱいだ。

そうするうちにパラパラと雨が降ってくる。

「そろそろ終わりにしましょうか」

Kさんが空を見上げながら。
天気予報で昼頃から降ると言ってましたからと言い。
クルマに道具を収めはじめる。

そして最後にバケツからコアジを取り出し。
ビニール袋に入れる。
海水の入ったバケツのままのほうが新鮮でいいのでは?
と。疑問に思えば。

「早めに死なせたほうがいいんです。
ヘタに生かしておくとクルマに乗ったストレスで。
魚の味が落ちるんですよ」

そう言ってビニール袋の口を固く結ぶ。

やはり長年釣りをしているヒトだ。
こちらは魚のストレスなんて考えもしない。
(自分のストレスは気にするくせにw)

結局。釣りは午前中だけで終え帰路に就く。
車中でKさん曰く「日頃。ヒトと話す機会が少ないので。
良い気分転換・ストレス解消になりましたよ」

それはこちらも同じことで。
「楽しかったですよ。ありがとうございます」
と頭を下げる。

久し振りに新鮮な空気と潮風に吹かれ。
なんだか細胞が活性化した気分。
日常から少しだけ非日常へ。たまにはやってみるものだ。