アルク~春をあるく
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心地よい朝の光の中を歩けば。
線路伝いにホトケノザが咲いている。
その眩いばかりのピンクの花弁。

ああ。春なんだねぇ。

厚いjumperを着て。
まだ冬でいる自分が恥ずかしい。
と。心の中で問わず語り。

そこへ紋白蝶がひらひらと。
舞い降りてくる。
ピンクの花弁に白い羽。

「そうですよ。春なんですよ」
二つの色の取り合わせは。
春が来たことをそう告げている。

そっと紋白蝶に手を伸ばせば。
紋白蝶はまるで酔客の手を払うホステスのように。
見事なまでの軽やかさで身をかわす。

「スケベ爺。おとといお出で!」

紋白蝶は緑の葉蔭に隠れて。
そう呟いたに違いない。
これでもモテタ時期はあるんだよ。

ずいぶん昔だけどねっ!(涙

遮断機のない線路を渡る。
すると右手に田んぼが見える。
土は掘り返され。
黒い肌を光の中に晒している。

それは寒々しい黒ではなく。
温かみのある黒。
春の光から生まれた温もりのある黒だ。

歩を進めれば。
右手に乾いた畑があって。
菜の花が揺らいでいる。

キラキラした黄色い花弁に。
繊細で柔らかそうな黄緑の茎。
ここにも春の生き証人がいる。

やがて溜池の傍を通る。

池には数羽の野鴨がいて。
水面を切るように泳いでいる。
思えば。

ここには亀もいたはずで。

でも亀はどこにも見当たらない。
まだ冬眠中で。
甲羅の中に引きこもっているのだろうか?

亀が甲羅干しをしている光景。

それを見る時に。
春眠暁を覚えず~の語句を思い出し。
「のたり」とした春を感じる。

そうして。
狭い道から広い市道へと着けば。
細い渋柿の木があるが。
枝にはまだ若葉が見えない。

その枝に若葉が付く頃には。
さすがにオレも厚いjumperから薄い着物へと。
衣替えをして。
「春の仲間入り」をしているだろう。

そうやってアレコレ考えながら。
とぼとぼ歩けば。
オレの家が見える細い道に出る。





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