光の輪の中で
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光の輪の中で・油彩F4





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古いメモ帖~奇妙な物語
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①駅

彼是1年。列車は駅に止まったまま動かない。後続の列車も来ない。この駅はどうなっているのだろう。駅長が箒を持ち。構内の掃除をしている。オレは駅長に尋ねる。この列車は「故郷行き」のハズですが。いつになったら動くんですか?オレは故郷に帰りたいんです。駅長は掃除を止め。驚いた様子で答える。あなた知らなかったんですか?列車は永遠に走りません。この駅は博物館になったんです。昔のまま残しているだけですよ。1年待った「オレの時間」は。その言葉とともに跡形もなく消え去った。




②家

その家は。ずっと主の帰りを待っていた。主にとって帰るべきところは。自分の家しかないのだから。必ず帰ってくると思っていた。ところがいっこうに帰ってこない。家の中はすっかり埃だらけになって。散らかり放題だ。家は寂しくて寂しくて仕方がない。心に穴がぽっかり空いたようだ。やがて何者かの手によって。家の玄関に紙が貼られた。紙には「売家」と書かれてあった。家はその意味を理解したが。秋風にパタパタと煽られる紙をくすぐったく感じ。可笑しくもないのに。ケラケラと笑うことしかできなかった。




③アイス

暑くて土埃のする坂道を上がる。道の脇に婆さんが白い頬被りをして。氷菓子を売っている。アイスをください。オレは婆さんに小銭を渡す。しかし婆さんはすぐに受け取らず。冷凍庫から一本取り出してこう言った。お代はいりません。でも「あたりくじ」が付いていたら。お代をいただきます。可笑しなことを言う婆さんだ。オレはくじ運がないからこれは得をしたとアイスを頬張った。食べ終えると棒の先に「あたり」の焼き印が見えた。婆さんは少し意地の悪そうな顔を見せ。毎度ありがとうございます。と改めて手を差し出した。





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奇妙な話~
取り立てて大事なmessageがあるとか。深い意味や大袈裟なテーマなどはありません。かつてシュールな絵画作品を描いていた時期がありますが。これらはその文章化されたものと言えます。誰でも経験があると思いますが。手持無沙汰の時に書くラクガキ。あれと一緒ですね。
アルク~日照りのなかをあるく
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午後三時。我が家を出れば。
酷いかんかん照りで。
風のない中。蝉の声はかん高く忙しなく。
いっそう暑さをかき立てる。

遮断機のない踏切の左右を見渡すと。
伸びた線路がゆらゆら陽炎のように歪んでいる。

渡り終えれば。

横にずいぶん逞しくなった青い水田が見え。
その上をアカトンボやシオカラトンボが。
さながらヘリコプターのように巡回している。

そこを抜け。
民家の傍を抜ける。

垣根越しに。
ふわふわしたピンク色の花房が見える。
見覚えのある花だ。
ああ。花の名は何と言ったか?
頭の中でアレコレ名前をなぞる。

すると目の前に。
真黒い顔をした麦わら帽子の。
年輩の男性が現れる。
どうやらここの家人らしい。

花の名が思い出せないのが。
口惜しいから。
「すみません。
 あのピンク色の花はなんていう名前でしたっけ?」
と尋ねると。

「あれぇ~・・・
 え~っと・・・」
なんだかこちらも思い出しそうで。
思い出せないらしい。

ひょっと名前が浮かぶ。

「サルスベリでしたっけ?」
と口に出せば。

家人は。ああそうそうといった顔をして。
「そうじゃ。それそれ。それじゃったぁ!」
破顔一笑してこちらを見る。

「この暑い中。あんたよう散歩するねぇ~」

「はぁ・・・草臥れますわ~@@;」
苦笑いしてその場を過ぎる。

確かにこの暑さの中だ。
家人が訝しがるのも無理はない。

しかし。
信長に寺院を焼き打ちされた快川和尚は。
身を焼かれつつ。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」
と言ったではないか?

心頭滅却・心頭滅却・・・・

ブロブロブロ~と。
郵便配達の赤いバイクが傍を走る。
ああ。それを垣間見た刹那。
その瞬間。

心頭滅却。暑さ覚えず。

これを連続すれば。
心頭滅却はいと容易いが。
そこは凡俗。数秒が限界だw

坂道を上がる。
上がり切ったところで左に折れると。
横から歩いて来た白い頬被りをした婆さんが。
「暑いねぇ」
と陽に焼けた笑顔をこちらに向ける。

「暑いですねぇ~@@;」

やはり暑いものは暑い。
しょうがない。
凡俗は凡俗で改めようがないのだ。

そうやって。
坂道をだらだらくだれば。
我が家近くの。
涼やかな青い蜜柑の木が見えてくる。