お話~とうりゃんせ診療所(3-2)
とうりゃんせ診療所②

時計2



先生の前に。
しょんぼりした男の子がやってきました。

「ぼく・・・しげるです」

「ああ。しげるくん。
 よくきたね。
 なにをこわしたのかな?」

「これ・・・」

しげるくんは。
ズボンのポケットの奥から。
消しゴムを取り出しました。

消しゴムはずいぶん汚れて。
墨で塗ったように真っ黒でした。

「どうしてこうなったのかな?」

「ぼく・・・そのけしごむで。
 いつもいたずらしたあとをけしていたんです。
 だれにもみつからないように。
 ないしょでゴシゴシけしていたんです」

「うん。うん。それで?」
「このあいだ。おかあさんのおさいふから。
 すこしだけおかねをとったんです。
 すこしだけです」

「うん。そうだったの。それで?」 

「それで。とったあと。
 いけないことをしたとおもって。
 すぐにかえしたんです・・・」

「そう。それはよかった」

「そのあと。
 このけしごむで。
 ぼくのしたことをけそうとしたんです」

「うんうん」

「そしたら。
 なかなかきえなくて。
 どうしてもきえなくて。
 いっしょうけんめい。
 けしていたら。
 まっくろにちゃったんです」

「そうかい。
 きのどくだったねぇ」

「なおりますか?」

「ああ。なおるとも。
 せんせいがすぐになおしてあげるよ。
 あんしんして。
 まっていなさいね」
 
先生はにっこり笑って。
部屋を出て行きました。
しげるくんは。
自分のしたことを後悔して。
元気がありませんでした。

 ボーン ボーン ボーン

「わっ!」

しげるくんは。
初めて聞く柱時計の音に。
心臓が止まりそうになりました。

「いやぁ。ごめんごめん。
 おどろかしたねぇ。
 びっくりしただろう。
 うちのはおとがおおきくてねぇ」

先生はドアを開けながら謝りました。

先生は頭を掻いて。
しげるくんに消しゴムを差し出しました。
真っ黒だった消しゴムは。
元通りに治っているばかりではなく。
ピカピカと白く輝いていました。

「もう、なおったんですか?」 

「そうだよ。
 まぁ。そこへおかけなさい」

しげるくんをソファに座らせると。
先生も横に座りました。

「いいかい。
 このけしごむは。
 いたずらをけすためにつかってはいけないよ。
 そのけしごむが。
 どうしてあんなによごれたか。
 しっているかい?」

「いいえ」

「そのけしごむは。
 いたずらをけすたびに。
 きみのみがわりになって。
 よごれていたんだよ」

「はい」

「いたずらしたあとに。
 そのけしごむをつかわないこと。
 そして。
 かくれずにあやまること。
 わかるね?」 

「ごめんなさい」

「これからは。
 そのけしごむのつかいかたを。
 もっともっと。
 かんがえてみるといいね。
 きっと。すてきなつかいかたが。 
 みつかるはずだから」

「せんせい。
 ほんとうにありがとう」

しげるくんは。
すっかり元気になって。
治してもらった消しゴムを大事そうに。
ポケットの奥にしまいました。

「おまたせしました。つぎのかた。どうぞ~♪」




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この作品は12年前@@;に書いて。
2年前に当ブログにおいて掲載したものです。
再掲載するにあたって。
改めて見直し加筆しております。




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お話~とうりゃんせ診療所(3-1)
とうりゃんせ診療所①

ガラスだま


「とうりゃんせ診療所」
という病院がありました。

ここは壊れた大事なものを。
何でも治してくれる病院です。

その病院へ小さなキヨちゃんは。
泣きべそをかきながら入って行きました。

受付窓口には。
丸い顔の優しそうな看護師さんがいて。
キヨちゃんの顔を見るなり。

「はは~ん。
 さてはケンカだな?」

そう言って。
頭を撫でました。

「先生。キヨちゃんですよ~」

キヨちゃんが診療室に入ると。
小太りの丸い眼鏡をかけた先生が。
聴診器を肩にかけて。
微笑んで座っていました。

「やぁ。キヨちゃん。こんにちは」

キヨちゃんは元気なく。
こんにちはと言って。
先生の前に置いてある古くて丸い椅子に。
小さなお尻をのせました。

そして。
肩に掛けていたポシェットに。
手を入れて。
取り出したものを掌にのせました。

「おともだちの。
 さっちゃんとけんかをしたんです。
 それでガラスだまが。
 こわれちゃったんです。ほら。
 こんなふうになって・・・・」

キヨちゃんの小さな手には。
魚の目玉のような。
ガラス玉が乗っていました。

よく見ると。
ガラス玉にはヒビが入っていて。
二つに割れているようでした。
割れたところから透明な雫が。
ぽとりぽとりと落ちていました。

「さっちゃんの。
 ガラス玉とおなじで。
 なみだがでているね」

「せんせい。さっちゃんもきたんですか?」

「キヨちゃんが。
 くるすこしまえにね。
 もちろん。
 ちゃんとなおったよ」

「そうですか・・・」

「ちょっと。まっていなさいね。
 すぐになおしてあげるから。
 おもちゃであそんでてもいいですよ」

先生は部屋から出て行きました。
キヨちゃんは。
椅子に座ったまま先生を待っていました。

辺りを見回すと縫いぐるみや玩具など。
小さな子供にとっては。
大好きなものがころがっていました。
でもキヨちゃんは手にとって。
遊ぼうという気持ちになれませんでした。

壁を見ると。
大きな古い柱時計が掛けてあって。
大人の腕のような長い振り子が。
重々しく左右に揺れていました。

 ボーン ボーン ボーン

「きゃっ!」

柱時計の時間を知らせる大きな音に。
キヨちゃんは。
びっくりして椅子の後に隠れました。

「ああ。ごめんごめん。
 おどろかしてわるかったね」

部屋に入ってきた先生は。
謝りながら膝を折って。
キヨちゃんと同じ高さになりました。
そして。
きらきら光る元通りになったガラス玉を見せました。

「このガラスだまはね。キヨちゃん」

「はい」

「おともだちと。
 なかよくするためのガラスだまです。
 なかよくしないと。
 ガラスだまはないてしまって。
 われてしまうんです」

「はい」

「これからは。
 このガラスだまを。
 けしてわらないようにね。
 いつもきちんとみがいてあげてください。
 そうすれば。
 さっちゃんと。
 いつまでもなかよくできますよ」

「はい。わかりました。
 もう。けんかはしません・・・」
 
キヨちゃんは先生から。
ガラス玉を掌に乗せてもらい。
急いでさっちゃんの家に向かいました。

不思議なことに。
ガラス玉は前よりも。
奇麗になっているようでした。

「おまたせしました。つぎのかた。どうぞ~♪」






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この作品は12年前@@;に書いて。
2年前に当ブログにおいて掲載したものです。
再掲載するに当たって。
改めて見直し加筆しております。




始皇帝くん
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兵馬俑



秦の始皇帝は晩年。
権力を維持するために不老不死の妙薬を求めて。
徐福という人に探させた。

徐福は頭のいい人で。
そんな都合のいい薬がないことは
百も承知だったが。
なにせ相手は権力者だ。

馬鹿な事を@@;と思っても。
面と向かって逆らうわけにもいかず。
旅に出て適当に時間を稼ぎ。
果てはトンズラしたらしい。
(日本へ逃げたとの伝説もあり)

しかしもし仮に。

始皇帝がその妙薬を手に入れ。
不老不死になって現代まで生きたとすると。
おおよそ2200歳になる(はず?w

2200年は実に長い時間だ。
秦がそのまま残ったとすれば。
始皇帝の国家運営も相当な苦労があったはず?
と思われる。

以下。その後の始皇帝の話。

秦は劉邦・項羽あるいは曹操・劉備・孫権などの。
豪傑が現れる群雄割拠時代があったにしても。
それはごくわずかの期間の出来事であり。
長期的視野に立てば世界のどの国よりも安定していた。

しかし時が過ぎると強力な外敵が次々と現れた。

モンゴルのジンギスカン。
彼は始皇帝に勝るとも劣らない知略の持ち主で。
連戦連勝の騎馬軍団を持っており。
その行動力・領土欲は凄まじく。
彼の攻撃を防ぐのは並大抵のことではなかった。
(結局長生きした始皇帝の勝ちw)

時代が大航海時代になると。
ヨーロッパ勢の世界を股に掛けた侵略が始まった。
始皇帝としては防御の意味でも。
それに負けておれず。
近辺の国をどんどん植民地化していった。

その頃。地球は丸いという概念が世に現れた。
興味を持った始皇帝は巨大な帆船を作らせ。
「派酢子田蒲」という人物に海を渡らせた。
彼はぐるっと地球を一周して戻って来た。

「亀の上に象が乗っているのではないのだ!@@;」

始皇帝は目から鱗が落ちるようだった。

また秦本土でキリスト教の布教が流行り出し。
何たることか!始皇帝を崇めず。
金髪の唯一神やキリストを崇める輩が出てくるようになった。
取り締まりは厳重に行い。
始皇帝こそ唯一の神であることを誓わせねばならず。
ずいぶん骨の折れる仕事になった。

更に時代が過ぎると。次はお隣の日本という国から。
ロシアの南下を防いでやる!という名目で。
秦本土へゴキブリのようにズカズカ足を踏み入れて来た。

日本と言えばかつて秦の支配下にあった「李朝」へ。
豊臣某という惚けた爺さんが兵隊を送ってきたことがあった。
その時は爺さんが途中で死んでそれっきり終わったが。
今度の日本は明治維新を終えたとかでやたら元気がいい。

秦にすれば余計なお節介だったので。
適当にあしらっているうちに。
やがて世界中を巻き込む大戦争がはじまった。

戦争は原爆が日本に落とされることで決着するが。
今度は原爆を製造・使用したアメリカ合衆国という若い国が。
世界を牛耳るようになった。

「若造の癖に大きな顔をしやがって!!」

始皇帝は憤慨するが原爆には敵わない。
急いで原爆を作らせ。
いつでも世界に向けて発射できるように準備した。
だが不死身とは言え敵から落とされたら最後だ。
夜も安心して眠れない。

そこで原爆が1000個落ちても大丈夫!
というような安全で完璧な巨大シェルターを多数作り。
「兵馬俑」という名のお守り人形をたくさん置いた。

世界中でインターネットが流行り出すと。
始皇帝も情報収集のためシェルターの中でキーボードを叩きはじめた。
するとインターネットが癖になり。

「AKB48の紅白歌合戦?何それ?」

などと。
政治にまったく関係ない情報まで見るようになった。
また自分のブログを作って「びわ雑炊2200~わが闘争」なんて。
書こうかな?と思った。
(かなり始皇帝の脳もイカレテきているようですw)

ある日。始皇帝は庭の片隅で。
揺り椅子に腰かけながら。
2200年に及ぶ自分の人生を振り返ってみた。
すると戦争ばかりが思い浮かんだ。

「結局だ」

始皇帝は象牙のパイプを燻らせた。

「世界がオレの言う通りに動けばいいのだ。
 オレの事だけを考え。
 オレだけを崇めれば戦争もなく平和なのだ」

始皇帝は深い溜め息をついた。

「秦が出来た頃は張良などという大馬鹿者が。
 わしを殺そうとしたり不満分子も多かったが。
 長い年月をかけ人民はよく教育されてきた。
 しかし言葉も違う・習慣も違う蛮人どもは。
 わしの言うことを聞かず勝手なことばかりする」

世界情勢は毎日猫の目のように推移する。
やれ紛争だ・テロだ・消費税引き上げだ・ネット詐欺だ・原発事故だ。
そんな相変わらずの現況に。
生への執着が強かった始皇帝にもジワジワと厭世感が出てくる。
そろそろこの世を去ってもいいのではないか?と考え始める。

だが死ぬに死ねない。
何せ不老不死。
体は健康そのものだ。

「長寿の秘訣は何ですか?」

国民テレビ局「秦電視公司(しんでんしこうし)」の。
眼鏡を掛けた女子アナの質問にも。
腰に両手を当てながら明るい笑顔で答えねばならない。

「松の実・霊芝・ラジオ体操^^」

疲れた顔をして。

「そろそろ逝きたいですね^^;」

など冗談でも言えない。

始皇帝に幸あれ!
よく教育された人民は皆それを願っているのだし。
始皇帝は不老不死の神なのだから。




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何故に始皇帝?^^;

たまたま頭の中に。
不老不死という言葉が降りて来て。
そう言えば。
始皇帝は不老不死を求めていたな。
と思い付いただけのことで。
まぁ。たいした意味はありませんw

適当に歴史を作ったので。
かなり怪しいところもありますが。
妄想ということで。
見逃してやってくださいw

因みに自分はどうか?というと。
不老不死は望んでいません。
権力・名声・実力・富・おまけに妻子。
みんな持っていないのでw
心残りがないのです。

皆様に幸あれ!^^)/



冬休み継続中・閑話休題~雲
羊雲
羊雲~waravino・1980





雲のように形に囚われず。
生きることができたら。
どんなにいいだろう。

ある時はシュークリーム。
またある時は像のようになるんだ。
変幻自在。
どんなに強い風が吹いても。
やんわりかわすだけ。

雲はすごいねぇ。

でもボクには。
人として与えられた形がある。
だから例え。
雲になることを望んだとしても。
それは無理だよね。

やがて形がなくなる日まで。
ボクは形の中で。
形を守って生きて行く。

それがボクの存在。
それでも。
捨てたものではないんだよ。

神様は何でも心得ているからね。

不自由なボクに。
見えない翼を与えているんだよ。
「想像力」という翼。

ボクはそれを使って。
囚われない世界へ。
行くことができるんだ。





アルク~早朝風景・初冬
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曇天の早朝。
煙草が切れたことに気づき。
小さなタイヤの自転車で。

コンビニへ行く。

今朝は今年一番の冷え込みで。
厚手のジャンパーを羽織っているものの。
ハンドルを握る指先が冷たい。

昔昔。
とある雪国の。
子狐は言った。

「お母ちゃん
 お手々が冷たい
 お手々がちんちんする」

ああ。手袋手袋(涙

片方づつ。
手に息を吹きかけながら。
自転車を走らせる。

廻りを見れば。

学生が急しく自転車のペダルを踏み。
会社員は鋭角的にクルマのハンドルを切っている。
老人たちは歩道に座り込んで世間話。
(寒いのに何もそんなところでw)

それぞれの一日が始まってゆく。

コンビニへ到着。

ふとパンの置いてあるコーナーを覗く。
「合わせて買うと30円お得です!」
という札が付いている。

パンと飲み物を買えば。
30円も!得するらしい。
(30円貰えるわけじゃないw)

どうしてこんなアピールに弱いのだろう?

買うつもりがなかったのに。
当たり前のように。
パンと飲み物を選んでいる(涙

ピーナッツバターの入ったパンに。
小倉あんのデニッシュ。
焼きそばパンにコロッケパン。
メロンパンにアンパン・サンドイッチ。

迷った挙句に選んだのは。

苺のジャムパン。
そして。
キリン~fire・微糖。

煙草と合わせて買えば。
もっとお得になっていいのに!w
などと。
バカなことを思いつつ。
商品の入った小袋を持って。
店を出る。

コーヒーが温かいうちに。
呑もうと思ったが。
生憎座る場所がない。

自転車を押しながら。
袋からコーヒー缶を取り出し。
口に含む。

甘くて苦い温みが。
喉を通って胃袋へ落ちる。
缶を握った左手に。
より温みを持たせようと。
力を込める。

銀杏を見上げる。

二羽の野鳥が忙しなく。
枝を突いている。
表皮に虫が隠れていて。
それを食べているのか?

すみません。
こちらは。
ジャムパンを戴きますね^^

自転車を止め。
右手にジャムパン。
左手に缶コーヒー。

「あら?
 こんな寒空の中で。
 パンを齧っているおじさんがいるわ。
 もしかして・・・気の毒な人?
 そうよ。
 そうに違いないわ!
 何かと物入りの多い歳の暮れ。
 これ僅かばかりですが。
 お役立てください。
 いえいえ。
 お礼はいいですから。
 これからも。
 頑張って生きてくださいね!^^」

そうではない!@@;

缶コーヒーが温かいうちに。
食べる。
これは言わば作法なのだ!(?w)

赤いジャムは。
溢れるほど入っていて。
その甘酸っぱさは。
なんだか懐かしい。
(夢・青春・希望)

左前方を見る。

そこには柿の老木があり。
枝に留まった鴉が首を傾げながら。
胡散臭そうに。
こちらを見ている。

木には。
まだ実が残っているが。
鴉はそれを食べる気はないようで。
どうやら。
人間の方に関心があるらしい。

オレの中の。
聖フランチェスコが。
鴉よ。鴉。鴉さん。
長年の友人を呼ぶように。
手招きする。

「さぁ。おいで。
 一緒にパンを食べようじゃないか?
 これから寒さが厳しくなるねぇ^^」

優しく語りかけ。 
パンを与える。
鴉の嬉しそうな顔^^

が。

オレの口は。
食い意地の張った俗人で。
最後の一欠けらまで。
美味しく戴く。
鴉の恨めしそうな顔(汗

オレは。
残った袋と缶をポケットに入れ。
自転車に跨る。

ペダルを踏んで。
右に曲がれば。
我が家まで一直線。

手の冷たさは忘れている。