古いメモ帖~waravino・Twitter novel③
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着衣鬼図・葛飾北斎



夏と言えば怪談です。しかし怪談話というのは好きではないのです。だって怖いじゃないですか?w なので。ここに書いたものは怖くありません(何なの?)お気楽にどうぞ^^




①無人駅
男は電車に揺られ。知らぬ土地へ行く。荷物はバックだけだ。無人駅に降り立つと。霧が立ち込めている。前が見えない。男は手探りで出口を探すが。手掛かりが掴めない。次の電車が来る。誰かが降りてくる。足音が男の前で止まる。女の声。わたしが案内します。女は男の手を取る。その手は妙に冷たい。


②光
その光は女の行く所に必ず付いてきた。まるで監視されているような気分だ。女はとうとう溜まり兼ねて。光に向かい激しく罵った。どうして。わたしばかりに付いてくるの!気がおかしくなりそう!その日から光は女の元に来なくなった。女は光の監視から解放され。自由な気分になった。闇が来た。


③水晶
老婆が片手に水晶を乗せ歩いている。隣を見れば。白い顎鬚の老人の手にも水晶が乗っている。どうして皆さん。水晶を持っているんでしょうか?お前も持っているじゃないか。ほうら。手の中を見てごらん。老人が固く握りしめた僕の拳を開く。すると掌から黒々とした炭がひとつ現れる。


④希望
香りのいい風が吹いてくる。男は風の正体を知りたくて歩きだす。一日二日と歩く。見つからない。一年二年と歩く。見つからない。十年二十年と歩く。まだ見つからない。男は歳をとる。目が悪くなる。足取りが重くなる。もうここらで止めよう。すると風は。それを待っていたようにピタリと止む。


⑤海の底
海の底に銀色の髪をした娘がいる。娘は魚と戯れイルカと遊ぶ。嵐で沈んだ船から若い船乗りが出てくる。なんと美しい娘だろう。どうか。ぼくと結婚してください。沈んだ船の中に沢山の財宝があるのです。娘が言う。わたし顔の好みがうるさいの。え?船乗りは骸骨になったのを知らない。


⑥座敷わらし
ある蒸し暑い夜のこと。座敷わらしが汗だくになり扇風機の前に居る。はやく冬こね~かな!それを見ていた奥さんの雪女が言う。エアコンぐらい買ってよ!貧乏な男と所帯を持つんじゃなかった。なんて不幸なのかしら!座敷わらしが言う。おら。人の家にいると幸せにできるんだがな。 


⑦ひとつ
ある蒸し暑い夜のこと。唐傘小僧が足のすね毛を剃っている。足が一本しかないから大事にしなきゃね!それを見ていた一つ目小僧が言う。おれも目がひとつしかないから。パソコン・ケータイ・テレビは見ないよ。とにかく液晶画面はヤバイ。お互いひとつを大事にしよう!!


⑧待ち人
誰かをお待ちのようですね?日傘をさしている女に男が尋ねる。女が答える。もう1時間待っているんです。あの人は約束を忘れたんじゃないかしら?いつだってそうなの。時間通りに来た試しがないんだから。男が笑う。彼がそうするのは。あなたの時間を奪いたいからですよ。愛してるんですよ。あなたを。


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古いメモ帖~waravino・Twitter novel②
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waravino・Twitter novel② 今回は「大河ドラマふう・秀吉」です。本能寺の変・山崎の戦い・賤ヶ岳の戦い。時代劇が好みでない方には大変申し訳ありません。ひたすら当方の妄想で書いております。お気楽にどうぞw



①本能寺
新月の夜。桔梗の旗印が。本能寺へ向かっている。馬の背に揺られた明智光秀の顔は。闇の中であるにしても蒼ざめている。手綱を持つ手が妙に汗ばむ。明智家が残るためには。信長をやらねばならない。今は戦国の世。下剋上である。これは部下に隙を与えた信長の過ちである。そう何度も己に言い聞かせる。


②報せ
信長が死んだ。秀吉は呆然として。その場に座り込む。信長と出会った若き日から現在までのことが走馬灯のように思い起こされる。秀吉の膝を叩く者がいる。ご運が開けましたな。官兵衛が上目遣いで自分を見ている。微笑むような目だ。何のことだ?秀吉が答える。官兵衛の思惑は言わずともわかる。


③敗北
光秀は追手の目から逃れ。坂本へ帰るため竹林の中をさ迷っている。供する者は重臣・溝尾茂朝など数名。光秀は思う。間違った戦ではなかった。天が味方をしなかったのだ。足元に桔梗の花が咲いている。妻の顔が浮かぶ。黒ずんだ顔が思わず綻ぶ。手にしようと腰を折る。瞬間。光秀の背中に激痛が走る。


④戦後
秀吉は茶を飲んでいる。傍に官兵衛が控えている。秀吉は山崎の戦いを振り返り。光秀は大馬鹿者じゃ。人を信用し過ぎる。朋友の幽斉など保身ばかりを考える。頼りになるものか。湯呑みを摩りながら官兵衛を見る。信用しなければ大事は起こせないものです。官兵衛は言い終わり。今度は己の番を覚悟した。


⑤竹中半兵衛
官兵衛は息子・長政に言う。わしが荒木村重の説得に失敗し。囚われの身となった時。信長殿の命でお前が殺されるところを半兵衛殿が匿ってくだされた。半兵衛殿とすれば。自分の死が近いのを悟っておられた故。その様な事が出来たのだろうが。わしを最後まで信用してくだされたからでもある。


⑥伊賀越え
その頃。家康は伊賀の山中にいる。伊賀者・服部半蔵を先導役に岡崎へ向かっている。闇の中。獣道を通る。ふいに小枝が腕に突き刺さる。家康は痛みを感じるどころではない。死に物狂いで歩く。信長公が光秀に討たれるとは想いも寄らぬこと。じゃが。これはもしかて。わしの運が開ける切っ掛けとなるやもしれぬ。


⑦北ノ庄
柴田勝家は妻・市を呼んだ。お前と娘たちが生き残ってくれるのが。わしの望み。元の主君の妹であれば。あだや疎かにはすまい。この城から出て秀吉の元へ行け。勝家最後の頼みじゃ。市は白い顔を紅潮させている。あの猿の元へ行けと?もう誰の元にも参りませぬ。わたくしの居場所はここしかないのです。


⑧浅井の血
秀吉は燃え落ちる城の中から連れ出された三人の娘を迎える。よう来られた。戦とは言え。そなた達には惨いことをした。すまぬ許せ。これからはわしがそなた達の親となろう。茶々が顔を上げて言う。親はもう要りませぬ。母は浅井家の血を絶やすなと申しました。わたしは浅井の血を残さねばなりませぬ。


お話~紅太鼓
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それはそれはずいぶんと。
昔のことでございます。
とある処に。
紅い太鼓を抱えた青い猫がいたのでございます。

世間がいかに広かろうとも。
腹に太鼓を抱えた猫は。
この猫ぐらいでございましょう。

青猫はデデン・デンデンと。
さも楽しそうに太鼓を叩き。
しゃがれた声で。
このように唄うのでございます。

「ほうれ。ほれ。
 皆の衆。
 聞いていけ聞いていけ。
 紅太鼓を聞いていけ。

 一度聞けば病気が治り。
 二度聞けば若返る。
 三度聞けば極楽往生。
 
 紅太鼓を聞いていけ。
 デデン・デンデン」

確かに。
青猫の申しますことは。
確かな事でございました。

たとえば。
 
長年の病で寝込んでいた者は。
何事もなかったように。
すくりと立ち上がり。
傍に付き添っていた者に向かい。

「おやまぁ。どうしたんだい?
 やけに陰気な顔をしてるじゃないか?」

などと。
まるで病のやの字もなかったような。
呑気な顔で言い。
相手を慌てさせるのでございました。

さて老いた者は。
どうかと申しますと。
肌の艶が甦るのは無論のこと。
それまで重かった身や心が。
雲のように軽くなり。
そのような者たちの中には。

「おい。お前。
 もう一人子供でも作ろうじゃないか?」
「あらいやだ。お前さん。真昼間っから!」

などと。お互いの肩を叩き合い。
顔を赤らめる老夫婦もいたのでございます。

また己の罪に苦しんでいた者は。
死に至る時。
必ず安らかな顔になり。

「幸せな一生だった」

と言いながら。
団扇で涼をとるような顔になり。
安寧と。
極楽往生を遂げるのでございました。

さて冒頭で。
昔の話と申しましたが。
実は。
青猫は今の時代にも。
生きているのでございます。

昔と同じように。
腹に紅い太鼓を抱え。

「ほうれ。ほれ。
 皆の衆。
 聞いていけ聞いていけ。
 紅太鼓を聞いていけ。

 一度聞けば病気が治り。
 二度聞けば若返る。
 三度聞けば極楽往生。
 
 紅太鼓を聞いていけ。
 デデン・デンデン」

と囃し立てて。
歩いているのでございます。

ただし。
いつどこに現れるかは。
誰にもわかりません。

なにぶん。
猫の事でございますから。
その日その時の。
気分次第なのでございます。

さて。

貴方様には青猫の姿が見え。
紅太鼓の音が聞こえましょうか?
如何でございましょう?



古いメモ帖~waravino・Twitter novel①
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自転車/わら半紙・色鉛筆(黒)


とくにテーマはなく感覚だけの。脈絡のない落書きです。こういったものを書いている時は。何やらシュールな「ラクガキ系」の絵を書いているような気分になります。元来。そういった傾向があるのでしょう。他愛のない話ばかりです。お気楽にどうぞw




①てるてる坊主
昼からずっと雨。雨雨雨。てるてる坊主は押し入れの柳梱りから這い出して。久し振りの雨に感慨深気な顔をする。雨を見たのは20年前だろうか?あの頃は雨を止める事ばかり考えていた。それが自分の置かれた立場だと信じていたから。でも今はそうじゃない。オレほんとは雨が好きだったんだよ。


②花
男が冷蔵庫の中を覗くと。そこにあるはずの食パンはなく。その位置には一輪の蒲公英が咲いている。さて?どうしてこんなところに蒲公英が咲いているのだろうか?腹が空いたし蒲公英でも食うか。花が懇願する。やめてください。私はカヨワイ花なのです。しくしく。泣いた花の下にパン屑が落ちている。


③鬼
鬼はいつの間にか。地獄から離れ。極楽にいるらしい。というのも。絶えず燃え盛っていた炎は見当たらないし。鼻を突く硫黄の匂いは消えている。炎の代わりには美しい調べが。そして。硫黄の匂いの代わりには花の香りがする。さてここは。あの極楽というものだろうか?鬼はさっと怯えたような顔をした。


④隅田川
川の畔に。歳の頃。四十ぐらいの女がいる。顔には。これといった皺はなかったが。腰まで伸びた髪が雪のような銀色をしている。女は右手に柳の小枝を持ち。それを振り振り。か細い声で。幼い頃に行く方知れずとなった息子の名を呼ぶ。「母上。ここにおります。この柳の木の下に。わたしはいるのです」


⑤内蔵助吉原遊興
花魁よ。そちはどこの産か?へぇ。わちきは長崎産まれでありんす。その長崎の花魁が。伴天連と睦んだ果てが。わちきでありんす。その時。大石内蔵助は瞬間。嘲るような女の白い顔を見た。花魁だと思っていたが。どうやら騙されていたらしい。ならば。ここは騙されついでに俺もこいつを騙してやろう。


⑥寒山・拾得
風が連れて来たのは寒山・拾得。ひとりは箒を持ち。こちらに向かって薄く笑い。もうひとりは。何も気にせず書を読んでいる。どこかでお会いしましたかね?そう二人に尋ねると。どこからするのか。お前の背中は知っているが顔は知らないな。という声が聞こえ。二人は静かに蝋燭の火のように消える。


⑦青猫
それはそれは。ずいぶん昔のことでございます。とある処に太鼓を叩く青い猫がいたのでございます。世間がいかに広かろうとも。腹に太鼓を抱えているのは。この猫ぐらいでありましょう。猫はデンデン・デンと叩き歩き。それを聞いた者は。なんでも幸せになるという噂なのでございます。


⑧桜の精
桜の精が言う。あなたはずいぶん前から桜の木の下に眠っているのです。あれを御覧なさい。そう言われ見てみると。確かに胸の上で手を組み。木片のように眠っている。それではここにいる自分は何ですか?と尋ねると。それもあなたです。虚という名の。という返事があった。





河童のいた夏
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葛飾北斎・河童



その昔。
亡くなった母から。
聞いた話。

「夏の晩。
 裏のナスビ畑から。
 魚が腐ったような。
 生臭い匂いが。
 してきたんだよ。

 気になって行ってみると。
 畑が荒らされて。
 ナスビが盗られていた。
 
 残ったナスビには。
 3本の爪跡があって。
 あれは。
 河童の仕業じゃろうと思う」

母の故里は。
天草郡・鬼池村。
サスペンスの。
舞台になりそうな地名だ。

地名だけなら。
河童が出て来ても。
少しも。
不思議ではない。

不思議ではないが。
さすがに。
これは如何かな?
と思うw

河童の皿か甲羅が。
落ちていれば話は別だが。
証拠がなさ過ぎるw

恐らくカワウソの類が。
悪さをしたのでは?
と思われる。

カワウソは。
魚類などを食べるから。
便には魚の鱗などが混じって。
独特な生臭さがあるそうだ。

漂ってきた臭い。
というのは。
カワウソの便ではなかったか?

石川県・能登の民間伝承では。
カワウソと河童は。
似たようなものだとされているし。
あながち。
的外れの推測ではないと思う。

母の若い頃は。
田舎でもあるし。
夜中の道など真っ暗で。
それこそ。
足元も見えなかった。

夜が夜の顔をしていた時代だ。

「見えない世界」は不安を煽り。
不安は「想像の世界」を産み。

「想像の世界」は「妖しい世界」へと繋がり。
様々な民間伝承を産む。

「河童ではないかねぇ?」

これはそんな感覚が。
言わせたものだと思う。

その母が亡くなる前に。
病室で。
聞かせてくれた不思議な話がある。

寝苦しさを覚えたという夜のこと。

ふと人の気配を覚えて。
母が目を開ける。
ベッドの柵辺りに人が立っている。

母の素振りに。
気付いたその人は。
すぐに背中を向けて。
逃げようとする。

「ちょっと待って。
 どこへ行くんかね!
 あんたは誰かね!」

すると。
その人は立ち止まり。
母の方を振り向く。

「どこにも行かんよ。
 ここにいるよ・・」

そう言って。
やさしく笑う。

その顔を見て。
母はぞっとする。

笑ったその顔は。
母に。
そっくりだったのだ・・・

そんな母だったから。
若い頃の話も。
ほんとうに。
河童だったのかもしれない?w