閑話休題~青い青いふるさと
青い青い故郷





みんな。
みんな。
何もかも。
通り過ぎてしまったね。

生まれ故郷は。
あるようで。
ないようで。

もうどこが。
故郷か。
わからなくなったよ。

そのぐらい。
時は。
遥か遥か。
遠く遠く。
過ぎ去ってしまったよ。

こんな5月の。
目に沁みるような。
青い青い空。

確かにぼくは。

故郷を。
そして。
たくさんの。
モノや人を。
見失ってしまったけれど。

あの空だけは。
ずっと。
ずっと。
逃げずに。
一緒にあったよ。

青い青い空。

ぼくの故郷は。
青い青い。
あの空にある。




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お話~memo紙
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少女の。
捨てたmemo紙は。
風に乗って。

空へ空へ。
舞い上がる。

鴨の群れがV字を作り。
北に向かって飛んでいる。

群れの端にいた若い鴨が。
行く手に陽光を浴びて。
キラキラ光るmemo紙を見つける。

擦れ違い様。
さっと。
口に咥える。

飲み込もうと思ったが。
どうやら。
食べものではないと気付く。

傍にいた老いた鴨が。
その様子を笑う。

「それは人間の作った紙というものだ。
 おや?
 何か書いてあるじゃないか。
 ちょっと見せてみろ」

「書いてある?
 何ですか?
 それは?」

「人間は紙に文字を書き。
 他者に自分の考えを伝達するんだよ」

老いた鴨は。
若い鴨の嘴の先にあるmemo紙を。
声を出して読む。

「ありがとう・・・」

老いた鴨は。
そこまでしか読めない。
そこから先は。
嘴に隠れている。

若い鴨が言う。

「ありがとう・・・って。
 なんですか?」

「お前が知らないのも無理はない。
 鴨には必要がない言葉だ。
 当たり前のことだから。
 この意味は。
 他者が自分に対して。
 幸いを与えてくれた時に使う。
 お礼の言葉だ」

若い鴨が。
怪訝な顔をする。
他者に幸いを与えるなんて。
当たり前のことではないか?
そう思う。
鴨の世界では。
当然のことなのだ。
だから。
ありがとうの言葉を知らない。

「あ!」

若い鴨の嘴から。
memo紙が。
するりと抜ける。

再び風に乗って。
空へ空へ。
舞い上がる。

やがて。

陽が沈もうとする頃。
風の勢いがなくなり。
memo紙は。
広い広い海に落ちる。

「父ちゃん。
 何か白いものが浮いてるよ?」

そう呟いたのは。
海亀の子供。
傍には父親がいる。

海亀の子供が。
鼻先で。
ツンツンmemo紙を突く。

その一部に。
書かれた文字を見て。
父親が。
さてこれはと。
首を捻る。

「愛しています」

おやおや。
と思う。
愛という言葉など。
海亀の世界では当たり前過ぎて。
使う亀などいない。
だから。
何やら可笑しい。

海亀の父親は。
万年生きているから。
何でも知っている。

「これは人間が。
 文字の練習にでも。
 書いたのだろう。
 それとも。
 人間は愛するという言葉を。
 敢えて口にしなければならないほど。
 愛がないのだろうか?」

海亀の子供が。
分からずに。
memo紙を食べようとする。

父親は。
それを払いのけて。
何事もなかったように。
子供を脇に寄せて。
家に帰って行く。

memo紙は。
波間に漂いながら。
深い深い夜を過ごす。

翌朝。

memo紙は。
砂浜に打ち上げられている。
すっかり乾いて。
皺が寄り。
ごわごわしている。

蟹が鋏を。
ちょきちょき。
させながら。
memo紙の前を。
通って行く。

「おや。
 これはちょうどいい。
 オレの鋏で。
 ちょきちょきしてやろう」

蟹は磨いたばかりの。
自慢の鋏で。
memo紙を切っていく。

memo紙に書かれた文字は。
ほとんど。
滲んでしまっている。

蟹は文字を。
読めなかったけれど。
例え読めても。
何が書いてあるか。
わからなかっただろう。

「さようなら」

そんな文字が。
最後に書いてあったのを。
誰も知らないで。

memo紙は。
細く細く切られ。
風に散っていく。





アルク~みかづきのよるに
ufo.jpg



日中。
歩き足らなかったこともあり。
夜になって。
しばらく歩くことにする。

空に三日月。
幾らかの星。
上下に白い雲がある。

雲は黒灰色の紙の上に。
ミルクをこぼしたように。
東西に広がっている。

夜の空気は。
湿り気を帯びて。
なんとなく。
雨を手招きしているような。
そんな。
むっとした感触。

どこからともなく。
ジージーと。
気だるそうな虫の声。

正面を見れば。

アパートの一室から。
明かりが零れ。
カーテンのない窓に。
パンツ一枚の男。

虫も男も。
どこか同じような気がして。
ニヤリと笑う。

斜めに走る踏み切を渡り。
線路伝いの。
細い未舗装路へ入る。

正面に。
無人駅が見えてくる。

無人駅は。
とうに。
終電を過ぎているが。
あたかも。
誰かを待つかのように。
青白い灯りが。
ぽつんと燈っている。

この無人駅の室内に。
二年前。
気になる落書きがあった。

「さよ、 かならず  ぼくが  迎えにいくから」

灰色のコンクリートの壁に。
鉛筆で黒々と。
刻むように書かれてあった。

あの日。
これが単なる落書きとは。
どうしても。
思えなかったのは。
オレの思い過ごし。
勘違い故だったろうか?

それとも。
オレの人恋しさが。
そう思わせたのだろうか?

味気ないクリーム色に。
塗り替えられた壁に。
今は落書きなどない。

更に歩く。

遠くの空に。
明滅する灯りが。
過ぎて行く。

光っているのは。
夜間飛行?
そうではない?

UFOではでは?@@;

なんて発想が。
どうしても。
起きてしまうのは。

矢追さん!!

あなたに。
刷り込まれたせいですよ!!w

UFO目撃。

その願いは昔も今も。
ちっとも変わらない。
見たからといって。
どうなるわけでもない。

でも何か。
い~じゃないか?と思うw

そうやって。
ぼちぼち。
だらだら歩けば。

我が家が。
すぐそこに見えてくる。




閑話休題~カエル日和
カエル日和




おはよう。
昨日は。
よく眠れた?

オレなんか。
久し振りの土砂降りで。
興奮してねぇ。
全然眠れなかったんだよw

ほら。
目なんか。
こんなに。
腫れぼったい。

え?
そりゃ。
初めっからだろ?
って。
~んなことはない!

オレの家系は。
代々。
美しい奥目なんだからねぇw

そんなことより。
ほら。
ごらんよ。
葉っぱから。
水滴が零れてる。

これが美味いんだ。

昔。
爺さんにね。
朝露は万能薬だから。
飲め飲め!
って。
そりゃ~喧しく。
言われたもんだ。

どうだい?
一杯。
飲んじゃみないか?

そうそう。
ぐ~っと。
いいねいいね!
どう?
美味かった?

これを毎日。
続けると。
若返るって話だよw

若かりし頃。
つまり。
オタマジャクシに。
なるって寸法だ。

え?
そりゃ勘弁してくれって?

ま。
確かにw

せっかく。
4本足になれたのに。
また尻尾だけに。
戻りたくないわな~w

そいじゃ。
少しだけにしておくか。
皆の健康を祝して。

乾杯!




お話~ガラス玉
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ガラス玉は。
ころころ転がって。
森の中へ行く。

するとそこには。
昔堅気の。
職人ふうの老人がいる。

老人は。
ガラス玉を手に取る。

やあ。これは可哀想に。
傷だらけで。
ずいぶん痛んでいるじゃないか。
地中に埋めてやろう。
そうすれば。
きっと良くなるから。

そうしてガラス玉は。
黒々とした土の。
深さ30cmばかりの。
穴の中に置かれ。
そっと。
土をかけられる。

やがて。

ガラス玉は。
深い深い眠りに付く。
だって。
穴の中は真っ暗で。
話し相手がいなかったから。
眠るしかない。

夢を見る。

夢の中に。
太陽や月が出て来る。

彼らの光が。
自分自身に当たって。
びくりするぐらい。
光り輝く。

ああ。

自分はなんて美しいのだろう!
この輝きは誰にもない。
世界中で。
自分だけが特別だ!!

そうして。

ガラス玉は。
夢であることも忘れ。
暗い暗い穴の中で。
微笑む。

そうすると。
痛んでいた自分の体が。
ピカピカした元通りの体に。
戻って。
行くように感じる。

あ。冷たい!

ガラス玉が。
その冷たさに驚いて。
目を覚ますまで。
いったいどれだけの時間が。
経っていたのだろう?

冷たい水。

地上で雨が。
降っているのだ。

ガラス玉は。
夢のことを思い出し。
そうだ。
この美しい姿・形の自分を。
皆に見てもらおう。
だって。
勿体ないじゃないか?
そう考える。

ここから出してくれ!!
美しいガラス玉が。
ここにいるよ!!
誰かいたら返事をして!!

何度も叫ぶ。

ところが。
いくら待っても返事はない。
だって暗い暗い穴の中だ。
声は地上に届かない。

やがて声も枯れ。
悲しくなり。
草臥れて。
長い長い眠りにつく。

今度の眠りに夢はない。
ただひたすら。
長い長い時間が過ぎる。

再びガラス玉が。
地上の光を浴びたのは。
ガラス玉が。
ガラス玉であることを。
忘れるぐらいに。
時間が経ってからのこと。

老人が手のひらに。
ガラス玉を乗せている。

ガラス玉は以前のことを。
すっかり忘れている。
そして。
生まれたての。
赤ん坊がそうであるように。
光に満ちている。

さぁ。
すっかりよくなった。
森の外へ出て行き。
いろんな場所で。
いろんな経験をしてきなさい。

老人はそう言って。
森の外へ向けて。
ガラス玉を転がす。

ころころ。
ころころ。

ガラス玉は。
道を確かめるように。
ゆっくり。
ゆっくり転がる。

やがて。
森の外が見えてくる。
かつて。
自分がいた世界。

しかし。
ガラス玉には。
一片の記憶もない。
何もかもが。
初めて見る世界だ。

「この世界には。
 何があるのだろう?」

不思議そうに。
そう呟くと。
更に速度を上げ。
跳ねるように。

「見知らぬ世界」へ。
転がって行く。